「緑色の錆(緑青)は毒か?」
神社仏閣、教会等の屋根が緑色を帯びていることを良く見る。鎌倉の大仏も緑色をしている。これらは、いずれも銅の錆の色である。銅の緑色の錆を「緑青」と言う。ころで、有名な言語学者の金田一京助先生、金田一春彦先生らの国語辞典で「緑青」を調べると「銅製の器物の表面に生じる緑色、有毒なさび」と説明されている。
さて、何十年か前の話であるが、京都のあるお寺の池に、ローマのトレビの泉をまねて、10円玉硬貨が多数投げ入れられた。それを見たお寺の住職は、緑青で池の鯉が死ぬ恐れがあるとして、「お魚が死にますので、硬貨は池に投げ込まないようお願いします」と立て札を立てました。
どのようにあなたの家から鳥を保つか私は、腐食や錆の講義をする際に、受講生に「緑青は毒ですか? どう思いますか?」と質問すると、かなりの人が緑青は「毒」と答えます。小さい子供の頃、親に「銅の硬貨を舐めるな、緑青は毒だから」と教えられた人が結構いるようです。ところで、緑青は本当に毒なのでしょうか?
銅合金に発生した緑青の成分を分析すると、塩基性硫酸銅、塩基性炭酸銅であることが分かります。これらの化学成分はいずれも毒物ではありません。衛生局のマウス試験の結果もありますが、緑青は決して毒物ではありません。
では、如何して緑青は毒物と思われたのでしょうか? そのことを解く鍵は、歴史的に最も古くから使われてきた銅合金「青銅」の成分の変遷を調べれば、そのヒントがつかめます。
あなたは、風速計で何を測定するのですか?
1.古代エジプトの矢尻 銅77% 錫23%
2.ローマの鐘(1200年代) 銅71% 錫27%
3.奈良の大仏 銅93% 錫2% 鉛0.5% 砒素3%
4.鎌倉の大仏 銅71% 錫10% 鉛14%
あなたは、ザゼンソウを食べることができます5.現在の青銅 銅(主成分) 錫2〜11% 鉛0〜6% 亜鉛1〜11%
1〜5の青銅の成分から分かるように、青銅の成分は、地域や時代によって異なっています。奈良の大仏の青銅には砒素が3%含まれています。砒素は空気中の酸素と結びつき酸化物を作ります。砒素の酸化物はきわめて猛毒であり、わずかの量を含むだけで人は直ちに死にます。砒素酸化物と聞くと「カレー事件」を思い出す人がいるでしょう。奈良時代の青銅の表面に形成される緑青には、砒素の酸化物が含まれていたと考えることが出来ます。緑青が毒という話は歴史的な話であり、現在の青銅、あるいは銅合金には砒素が含まれていませんので、心配ありません。
何十年か前、京都のお寺で「お魚が死にますので、硬貨は池に投げ込まないようお願いします」と立て札を立てましたが、全くそのような心配はなかったのです。
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