2012年2月22日水曜日

どのように丘のシロアリへ

アルバイシンの丘 : 『原発震災』を指摘していた反原発派

 この記事は去年の11月に書きかけており,あれは『想定外』だったのだろうか?2011年 11月 17日の記事につなげる予定のものだったが,年末の罰旅行があったりして,遂に今日までアップが延びてしまった。(一度中断すると,記事の構想やそれを主張する論理構成自体を忘れてしまい,それを思い出すのも億劫となるのである。)

 この記事は「今更ながら」の内容であると思うが,こういうことは何度確認してもしすぎるということはない。最近は反原発への推進派の巻き返しが相当にひどく,反原発の正当性を改めて確認したいのである。
 パピヨンが最近造語した「反原発トンデモ派」というのも確かに存在するが,ほとんどの反原発派は真摯であり,正当性を持った主張をしていることを記しておく。
(中には「反原発運動」が売名や金儲けの大いなるチャンスであると心得違いをしているばかたれも少なからずいるに違いない。それはじっくり見極める必要があり,わかった時点で批判していこうと思う。)

 本筋に戻る。反原発派の優れた先覚者は,『原発震災』という新語まで造って,警告をしていた。それを本記事で紹介することで,原発タカリ派の『想定外』は許されない言い訳であるのを示すことが本記事の趣旨である。これにより,原発の破局的事故が繰り返される可能性は十分高いことを再認識したいのである。これは自ずから原発の今後を考える際の重要な判断材料となるだろう(原発はやはり原子力ムラから取り上げて,静かに消えてもらわねばいかん,となるだろうね)。

 無論,『想定外』とは想定力という能力が欠如していたわけではなく,『想定切り捨て』の結果だろう。しかし,そうなると今度は『犯罪性』を追求すべき事態となる。『業務上過失(致死)』などの適用を本来は検討しなければならないと思っている。(例の,"予見性"のことである。)

 さて,本記事での『反原発派の優れた先覚者』とは,地震学者:石橋克彦である。(多分,現在は神戸大学名誉教授で,国会であの児玉教授とともに参考人として意見を述べた学者である。皆さん,すでにご承知のことでしょう。でも何度でも称えて良い。)

 引用の発信源はここ,原発震災である。なんだかたどり着きにくい設計のサイトだが,コンテンツ自体はちゃんとしたソー� �もあり,信頼できると思われる。
 強調しておくが,これは2000年前後の10年以上も前の記事であり,東海地震を念頭に置いた浜岡原発の危機的状況を予測したものである(東海地震と原発震災 )。でもまるで,福島の原発事故を見て書かれた記事のように思える。津波の脅威こそ書かれてないが,地震が原発を襲うとどんなに恐ろしいことが出来するのか,確実に予想されている。

 その中で,本記事では石橋克彦の記事を採り上げるのだが,直接リンクを貼ることができないので以下に直接書き出すことにする。(下線はパピヨン)


なぜ服は黄色ですか?

 ====今こそ「原発震災」直視を  石橋克彦====
 九月末に茨城県東海村の民間核燃料加工施設で起きた臨界事故の真の散訓は、原子力の本質的な恐さを見据えて、あらゆる面での安全性を総点検し、それを踏まえて原子力政策を根底から考え直すことだろう。しかし現実は、ずさんな施設の安全性確保や小規模事故の防災体制といった議論にとどまっている。小論では、見過こされている「原発震災」の現実的可能性を直視すべきことを訴えたい。それは、原子力発電所(原発)が地震で大事故を起こし、通常の震災と放射能災害とが複合・増幅しあう破局的災害である。

 政府・電力会社は、原発は「耐震設計審査指針」で耐震性が保証されているから大地震でも絶対に大丈夫だという。しかし、その根底にある地震(地下の岩石破壊現象)と地震動(地震� ��よる揺れ)の想定が地震学的に間違っており、従ってそれに基づいた耐震性は不十分である。

 そもそも、日本列島の地震の起こり方の理解が進んだ今となっては、列島を縁取る一六の商業用原発(原子炉五一基)のほとんどが、大地震に直撃されやすい場所に立地している。日本海東縁〜山陰の地震帯の柏崎刈羽・若狭湾岸・島根、 「スラブ内地震」という型の大地震が足下で起こる女川・福島・東海・伊万、東海巨大地震の予想震源域の真っただ中の浜岡などである。原子炉設置許可の際、過去の大地震や既知の活断層しか考慮していないが、日本海側などでは大地震の繰り返し年数が非常に長いから、過去の地震が知られていない場所のほうが危険である。

 また、活断層が無くてもマグニチュード(M)7級の直下地震が起こりうることは現代地震科学の常議であるのに、原発は活断層の無いところに建設するという理由でM6・5までしか考慮していない。しかも実ほ、多くの原発の近くに活断層がある。最近、島根原発の直近に長さ8キロの活断層が確認されたが、中国電力と通産省は、それに対応する地震はM6・3にすぎな� �として安全宣言を出した。しかし、長さ八キロの活断層の地下でM7・2の1943年鳥取地震が起こって大災害を生じたような実例も多く、この安全宣言は完全に間違っている。

 要するに、日本中のどの原発も想定外の大地震に襲われる可能性がある。その場合には、多くの機器・配管系が同時に損傷する恐れが強く、多重の安全装置がすべて故障する状況も考えられる。しかしそのような事態は想定されていないから、最悪のケースでは、核暴走や炉心溶融という「過酷事故」、さらには水蒸気爆発水素爆発が起こって、炉心の莫大な放射性物質が原発の外に放出されるだろう。一般論として原発で過酷事故が起こりうることは電力会社も原子力安全委員会も認めている。一方、米国原子力貴制委員会の� ��告では、地震による過酷事故の発生確率が、原発内の故障等に起因する場合よりずっと大きいという。


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 例えばM8級の東海地震が起これば、阪神大量災を一ケタ上回る広域大震災が生じ、新幹線の脱線転覆などもありうる。そこに浜岡原発の大事故が重なれば、震災地の救援・復旧が強い放射能のために不可能になるとともに、原発の事故処理や近隣住民の放射能からの避難も地震被害のために困難をきわめ、彼災地は放棄されて真大な命が見殺しにされるだろう。また、周辺の膨大な人々が避難しなければならない。浜岡の過酷事故では、条件によっては、十数キロ圏内の九〇%以上の人が急性死し、茨城県や兵庫県までの風下側が長期居住不能になるという予測もある。

 このように原発震災は、おびただしい数の急性および晩発性の死者と障害者と遺� ��的影響を生じ、国土の何割かを喪失させ、社会を崩壊させて、地震の揺れを感じなかった遠方の地や未来世代までを容赦なく覆い尽くす。そして、放射能汚染が地球全体に及ぷ。この事態に対して、臨時国会に提案されるという原子力防災法案は、本紙(注−朝日新聞)の報道で概略を知る限り何の役にも立たない。地震活動期に入りつつある日本列島で51基もの大型原子炉を日々動かしている私たちは、ロシアンルーレットをしているに等しい。この地震列島・原発列島に暮らすすべての人々が、この現実を正しく知って、どうすべきか考える責任がある。
(神戸大学教授・地震学=投稿)

 どうだろう,2000年前後の時点で,このような正確な予測が為されていたのである。無論,確率事象であるから,「運が良ければ」過酷事故には至らない可能性もある。しかし,そのような「ロシアンルーレット」を我々が住むこの国土で許していいのだろうか? いいや!原発マネーに群がる薄汚いブタどもに,我々の国土を委ねてはならん。少なくとも,この一事だけで,パピヨンがもし原発推進派であったら今後の原発に関わる体制の一新(これまでのブタどもの一掃)を絶対条件として求めるだろう。原発マネーに縁のない下層庶民でも,そうしない(一掃を求めない)原発推進派が多いことにとても不思議な感じがする。
 原発が無ければ停電になるんだぞ!などという批判はするなよ!電力会社と経産省の大本営発表をうのみにすることはやめよう。原発の夜間電力捨て場の役割でできた揚水発電は,別に原発でなくてもできる。また,最新式の効率80%の天然ガス発電所も都市部に作れる。これで十分賄えるはずだ。電力会社の供給力を誤魔化していたことがつい最近ばれたばかりだ。(<電力需給>政府今夏試算「6%余裕」伏せる)【注】
 そして,たとえ,夏場のわずかなピーク時間帯を凌ぐことが必要であっても,その工夫をすることの方が,そのために原発を稼働し続けることよりはるかにマシな選択なのだ。

 ところで,上の石橋氏の論文は朝日新聞に投稿されたものであった。ところが,結局,紙面に載ることはなかったらしい。無論,朝日がボツにしたためである。いかにも偽善者・朝日らしい。その辺の事情も前掲のサイトに書かれているが,それにも直接リンクを貼れないので,ここに書きだしておく。

東海村シンドローム"朝日新聞がボツにした地震学者の「警鐘論文」"(サンデー毎日1999/11/21)  ルポライター 石黒二郎(この号を直接当たって確認したわけではない)


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 東海大地震説を初めて説いた地震学者が東海村・臨界事故に関連して書いた「警鐘論文」がボツになった。各紙の事情はあるだろう。だが、不採用を告げるはがきには学者を憤慨させる意味深な添え害きがあった──。この論文の趣旨を重要だと考え、本誌であえて掲載したい。
ルポライター 石黒二郎
 「原発震災」なる言葉をご存じだろうか。筆者は不勉強にも、つい最近まで知らなかった。いや、「知らされていなかった」と言ったほうがいいのかもしれない。
 これは、関東大震災や阪神大震災のような大規模地震による災害に原発事故までが加わるという、空前絶後の破滅的的災害を意味する言葉である。
 まずは左ページの論文の、特に後半部分を読んでいただきたい。ただただ驚愕するしかないこの論文の筆者は、23年前にあの「東海大地震説」を打ち立てた石橋克彦・神戸大学教授である。ところでこの論文、そもそもは『朝日新間』の名物コーナー『論壇』欄に掲載してもらおうと、石橋教授が投稿したものだった。

「臨界事故が起きた今こそ、できるだけ多くの人に『原発震災』の破滅的な恐ろしさを知ってもらい、国民的議論のきっかけにしてほしいと考えたわけです」 (石橋教授)

 ところがあえなくポツにされた。そればかりか、〃ボツのお知らせ〃のわきに手書きで次のように添え書きされた一枚のはがきが教授の自宅に届く。「警鐘を鳴らし続ける意味はわかります。しかし、『どうすべきか考える責任』はすべての人にあるにしても専門家にはその先の『どうしたらよいのか』を具体的に提言してほしいと思います」

 つまり、専門家として「どうしたらよいのか」を提言していなくて無責任であり、掲載に値しない──というわけだ。石橋教授はこう反論する。

「この問題は、専門家の提言に頼っていればよいなどというチャチな問題ではない。事態を知らされた上で『どうしたらよいのか』を考える主人公は、あくまでも一般国民。現時点での専門家の責任とは、『まず、正し� ��知らせる』ことなのだ。その責任を圧倒的大多数の専門家は全く果たしていない。高度の科学技術が一般国民の日常生活を支配し、普通の人から政策決定権が奪われている今日、専門家とマスメディアは国民の側に立って判断材料を豊富に、わかりやすく伝えていかなければならないのに、この『論壇』担当者はそのことに対する理解も自覚も覚悟も、全く欠落している」

 具体的な提言として「危ないから、直ちに原発を止めよ」と論文内に書かれていたら、掲載したのだろうか?そこで朝日に聞いてみたところ、「『論壇』には毎週平均して数十通にのぼる投稿が寄せられ、掲載できるのは週5本程度と限られているため、投稿者全員のご要望にこたえることはできない」(広報室)とのこと。

 では、なぜあのような添え 書きをしたのか。「添え書きの部分は、担当者の感想。掲載できなかった理由は、あくまでも先に回答したとおり」(同広報室)。朝日としては、とにかく担当者一個人の問題として処理したいようである。ならば、詫びを入れるなりしていち早く、石橋教授の憤慨を解くべきだろう。

 最後に、氏名不詳の「担当者」氏へ。あなたがエラそうに書いた「感想」の見解に、貴社の広報室は頑としてくみしなかったぜ。悔しかったら、石橋先生と直接対決するがよい(別に、筆者とでも構わないが……)。


(筆者注)
耐震設計審査指針:原子力安全委員会が定めた、原発建設の際の耐震設計の評価目安。
スラブ内地震:日本の太平洋岸のやや深いところで起きる地震。岩石破壊の仕方が激しく、原発にとって都合の悪い揺れを生じやすい。
活断層:過去数十〜二百万年の間にずれ動き、将来も活動する可能性のある断層。直下地震の震源になる。
核暴走:原子炉が制御不能に陥ること。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故は、この果てに放射能を世界中にバラまいた。
炉心溶融:原発で炉心を冷やす冷却剤が失われ、炉心が溶け出すこと。79年の米・スリーマイル島原発裏故で起きた。
過酷事故:チェルノブイリ原発やスリーマイル島原発で起きたような、文字通りの過酷な事故
浜岡原発:静岡県浜岡町にある。御前崎の近く。現在、4基の原発が稼働中。

【注】 記事のリンクはすぐキレるので,書き写しておく。


<電力需給>政府今夏試算「6%余裕」伏せる毎日新聞 1月23日(月)2時30分配信
 今夏の電力需給について「全国で約1割の不足に陥る」と公表した昨夏の政府試算について「供給不足にはならない」という別の未公表のシナリオが政府内に存在したことが、分かった。公表した試算は、再生可能エネルギーをほとんど計上しないなど実態を無視した部分が目立つ。現在、原発は54基中49基が停止し、残りの5基も定期検査が控えているため、再稼働がなければ原発ゼロで夏を迎える。関係者からは「供給力を過小評価し、原発再稼働の必要性を強調している」と批判の声が上がっている。
 ◇再生エネ除外、「不足」のみ公表
 公表された試算は、東京電力福島第1原発事故を受け、エネルギー戦略を見直している政府のエネルギー・環境会議が昨年7月にまとめた。過去最高の猛暑だった10年夏の需要と全原発停止という想定で、需要ピーク時に9.2%の供給不足になると試算した。
 この試算とは別に、菅直人首相(当時)が昨年6月下旬、国家戦略室に置いた総理補佐チームに、電力需給の実態把握を指示。経済産業省に対して、発電所ごとの設備容量・稼働可能性、地域ごとの再生可能エネルギーの稼働状況など、試算の根拠データの提出を求め、再試算させた。
 その結果、現在の法律に基づいて電力会社が調達できる再生可能エネルギー容量は759万キロワット(原発約7基分)あったのに、公表された試算は供給ゼロだった。また、一部火力発電所で定期検査による稼働停止時期を猛暑の8月に設定したり、大口契約者への格安電気料金と引き換えに需給逼迫(ひっぱく)時の利用削減を義務づける「需給調整契約」による削減見込みもゼロとしていた。夜間の余剰電力を昼間に利用する「揚水発電」の供給力も低めに設定されていた。
 再生可能エネルギーによる電力供給などを盛り込むシナリオで計算し直すと、電力使用制限令を発動しなくても最大6.0%の余裕があった。再試算は昨年8月にまとまり、菅首相に報告されたが、公開されなかった。
 国家戦略室で同会議を担当する日下部聡・内閣審議官は「国の政策を決定する過程で、後になって『足りませんでした』とは言えない。慎重に堅い数値をまとめた。供給不足を導く意図はなく、昨年11月に公表した対応策で、再生可能エネルギーや火力発電の増強を必要な取り組みに挙げた」と説明する。一方、国家戦略室の総理補佐チームで再試算に携わった梶山恵司・富士通総研主任研究員は「電力会社の言い分をまとめた極端な前提に基づく試算。その数字が、原発再稼働を容認する政治家らの発言にもつながった。再試算は菅政権末期の混乱で公表できなかったのではないか」と問題視している。【永山悦子】



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